人狼奇譚〜そしてぼくらは蒼い夜のうたをきく〜

内容

 ノベルタイプアドベンチャー。
 主人公の狭山宗哉は平凡な高校生だったが、ある事件をきっかけに夜の世界を闊歩する一族(夜属)の人狼となってしまう。人狼は強力な狼に変身できる。正確に言うならば、本性が狼で、人間は仮初めの姿。宗哉は同じ人狼の嘉上美空に導かれ、夜の世界に足を踏み入れることになる・・・。

感想

 ネットで話題になったので買ったものの、買っただけで長い間放置状態。でも、いざやり始めたら止まらなかった。
 主人公が超常の力を突然持つことになった、というパターンは「痕」「月姫」など過去にもいろいろあったけど、それでもハマった(僕が伝奇ものが好きという理由もあるけど)。

 人狼奇譚は全部で32話に分かれている。
 最初は「美空」がヒロインの話を読むことになるけど、ある程度ゲームを進めると、別のキャラがメインヒロインの話も読めるようになる。もちろん同じ時間軸でもヒロインごとに展開は別のものになるし、結末も異なる。他のヒロインのストーリーで伏線が張られて、それが別のヒロインのストーリーで生きてくることも多い。
 主人公でない別の人物からの視点の話、外伝的な話も多い。物語の舞台裏の事情について分かることもあるし、本編への伏線となる話もある。
 同じ事件でも、主人公の視点から見た話、別の人物から見た話が用意されていることが多い。違う視点からの話を読んだ時に「あの時、実はこういうことがあった」「こうなったのはこういう事情があったから」とか分かることが多い。
 32話に分かれているわけだけど、1話読み終えたら、すぐに次の話を読んでみたい気になり、結果として最後まで一気に遊んだ。

 世界観の設定もかなり複雑で、夜の一族(夜属)は主人公の人狼の他、鬼、九十九、宿曜など他の種族もいるし、主人公にとって倒すべき敵の忌、主人公達を狙うアンヘルなどの組織、など立場や思想が異なる登場人物がズラリ。
 用語解説のメニューが用意されていて、登場人物の説明、用語の説明、夜属についての説明、忌の人物についての説明などが読める。読むことのできる項目はゲームを進めるごとに増えていく。
 物語をスムーズに読むためのヘルプという位置付けもあるけど、より深いことについて解説されていることも多いし、本編での文章だと分かり難いことについて補足されていることも多い。

文章も、皮肉的なフレーズが時々あって面白かった。以下はその例。
「正義はたいがい多数決でできている。」
「正義の味方は世界の味方で社会の味方―要するに最大多数の最大幸福をかかげる究極の保守派層だ。」
「しかし、この多数派というヤツは実のところごまかしで、声の大きいものの内の多数派、という実にいかがわしい代物だったりする。正義の味方に小さな声は聞こえないのだ。」
「そして、栄えある者あらば虐げられる者あるのがこの世の真理である。」
「世の中、弾圧されるのはいつだって少数派と決まっている。」

 その他、ゲームを起動するごとに格言・名言が表示される。


管理者:中霧里五
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