ワンダと巨像

内容

 独特の雰囲気の名作「ICO」の製作チームの新作。
 ゲームの舞台は人の存在を許さない閉ざされた土地「古の地」。
 恋人の失われた魂を取り戻す為、戦士ワンダは愛馬アグロを駆り「古の地」の何処かにいる16体の巨像を探して倒す戦いに立ち向かう。

感想

 このゲームのプレイ時間のほとんどは巨像との戦闘に占められる。
 ストーリーはあるものの、ストーリーが大きく動くのはオープニング、エンディングのみ。ゲームを先に進めるためにすることは「巨像を探す」→「巨像を倒す」の繰り返し。
 
 「巨像を探す」過程では、「ICO」同様の芸術的とさえ言える美しい世界を駆け巡る。
 剣を装備した状態で○ボタンを押すと光が出て、目的の巨像のいる方向に光が集まり、それを目指していく。「水平線の彼方まで伸びる光を目印にする」というのが独特の雰囲気があっていい。その光に向かって愛馬を駆って走り抜ける感覚もいい。人がいない世界をただ走るのもいい。巨像のいる場所が絶壁、谷、洞窟、遺跡、滝、森、湖など多種多様な場所なのもいい。
 
 「巨像を倒す」過程では、圧倒的な存在感を持つ巨像を自分の手で倒した感触を感じる。
 巨像は文字通り巨大で、ワンダの身長よりも巨像の足裏の方が遥かにでかい。接近したら膝下しか見えない。ほとんどの巨像の動きは緩慢であるものの、動きにぎこちなさは無い。
 闇雲に攻撃してもダメージは一切与えることができず、「巨像の部位の中で体毛のある部分にしがみつく」「振り落とされないようにして巨像の弱点のある部位まで移動」「振り落とされないように気を付けながら弱点を剣で突く」のステップを踏む必要がある。
 指先の操作よりも、「どうやって巨像に取り付く」か考える方がウェイトは高い。巨像はでかいし、中には空を飛んだり水中に潜るものもいる。それを地形を駆使して、弓を駆使して、馬を駆使して、終盤の巨像では取り付くまでに何段階ものステップをこなして、ようやっと取り付くことができる。巨像に取り付く段階までいけた時点で半分以上攻略できたようなもの。
 倒し方を探し当てるのはどんどん難しくなるものの、しかし一定時間経過するとヒントとなるセリフが表示される。ダメージを受けて体力がゼロになるとゲームオーバーだけど、しかし動かなければ体力は回復するし、巨像が攻撃してこない安全地帯のような場所もあり、ゲームオーバーになることはほとんど無い(唯一、14体目の巨像のみ、端に追い込まれて脱出不可能になって体力ゼロになった)。
 ほとんどの巨像の動きは緩慢だけど、しかし実際に巨像に取り付いてみると、巨像が体を揺らすだけで、巨像にしがみつくワンダの体は右に左に飛ばされ、そうすんなりとは移動できない。必死にしがみつくワンダの姿、揺れる巨像にカメラアングルが移っていく様子、突然勇壮なイメージのものに変わるBGMなどにより、巨像の大きさが更に強調される。それだけに、巨像を倒し、圧倒的な大きさの巨像が倒れていくムービーが流れるのを見ている時、巨像に比べてあまりに小さな存在が、困難を耐えてようやく巨像を自らの手で倒した達成感が自然に湧き出る。
 
 ゲームをより深く楽しむための工夫も多い。


管理者:中霧里五
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