五分後の世界

内容

 村上龍の小説「五分後の世界」と同じ世界を舞台にしたノベルタイプのアドベンチャー。
 五分だけ時間がずれた世界。そこでは日本軍が第二次世界大戦以降も降伏せず、今も巨大地下要塞に国家UGを建設してゲリラ戦を繰り広げている。地上は国連軍に分割統治され、各地はスラム化している。
 主人公が違う7つのストーリーがあり。それぞれの主人公の行動が他の主人公のストーリーに影響を及ぼす。「」と同じタイプ。
 ストーリーは完全にオリジナルで、主人公など主要登場人物もオリジナル。尚、原作の登場人物の小田桐、ヤマグチ司令官、マツザワ少尉、ミズノ少尉もゲーム中に脇役として登場する。「ヒョウガ・ウィルス(五分後の世界U)」のキャサリン・コウリーの事件のことも少し出てくる他、「ヒョウガ・ウィルス」の登場人物のクン・マニアも脇役として登場。
 ストーリーは硬派一筋。笑える展開は一切無い。下記は主人公の1人のコウモトのセリフ。
「それに一つ確実なことは、人間が一番下らねえ生き物だってことだ。動物は自分の食うぶんしか殺さねえ。他の奴よりいいものを食いたいとか、他の奴よりたくさん溜めこみたいとは思わねえ。いつも「自分」を基準に行動する。ところが人間って奴はたいがい「他人」を基準にしてものを考える。あいつのほうがいいものを食ってる、あいつのほうがいい服を着てる。あいつのほうが暖かい家に住んでる。そんな糞みてえな考えにとらわれて汲々として暮らす。妬みやら、自慢やら、中身のない事のために暮らす。そして戦争なんていう馬鹿馬鹿しいことまではじめだす。獣のほうが、どんなに真っ当だろう・・・・・・。」
 

感想 (○×型)

各主人公の立場がかなり違う。普通の世界から突然五分後の世界へ迷い込んでしまった高校生のサカキ、UG軍のベテラン兵士のヤエガシ、UG軍の若き英雄タケウチ、アメリカ人ジャーナリストのノーマ、スラム街のギャングのコウモト、天才科学者の少女ケイト、国連軍前線指揮官のジャック。舞台は同じ日本だけど、複数の立場から多面的に展開している。
各主人公の行動によって生じた影響が、他の主人公のストーリーに影響が出ることが多い。分岐によっては2人の主人公が共に闘うこともあるし、2人の主人公が敵として闘うこともある。
分岐が非常に多い。例えばサカキ編では1章2章3章の展開が大きく2つに分かれ、4章5章はやや共通だけど、6章は3つ、7章から3つの展開に分かれる。最終的には4つの結末に収束する(直前で分岐するものは1つとしてカウント、ゲームオーバー的な結末はカウントしてない)。細かい分岐は更に多い。
1つのストーリーはそれほど長いわけではないけど、主人公が違う複数のストーリーがあり、分岐が多いので、ボリュームは非常にでかい。総プレイ時間が表示されないので、正確には分からないけど、おそらく達成率90%以上にするのに必要な時間は「Fate/stay night」(50時間)、「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」(30時間)、「かまいたちの夜2」(30時間)と同レベル。
「五分後の世界」の世界観を基にしたストーリーではあるけど、原作を読んでいなくても困ることは無い。初めに読むことになるサカキ編のストーリーで世界観、歴史、文化についてタイミングよく説明されている。
「五分後の世界」は特にアニメにもなってないし、漫画化されているわけでなく、ゲーム化しやすそうなイメージは無いけど、原作の雰囲気を壊すことなく、硬派なストーリーになっている。「最後は黒幕が消える」みたいな展開ではなく、後味が悪かったり、すっきりしなかったり、淡白な展開だったりすることが多いけど、原作の雰囲気を考えるとこれがベストかもしれない。
シナリオ選択画面の上部からヒストリカル・ファクトというものが読める。各主人公が遭遇した事件について、第三者から見た2、3ページほどの文章。
シナリオ選択画面で△ボタンを押すと、各主人公が遭遇した事件で既読のものについてあらすじを1つずつ見ることができる。ムービーがあるものは、○ボタンを押した後に表示される。
各主人公のストーリーは1章〜4章に分かれる(サカキ編は8章まで)。各ストーリーは2、3パターンに分岐するけど、その最終章をクリアした後は任意の章からプレイ可能になっている。
各主人公の行動によって他の主人公のストーリーが変わった場合、シナリオ選択画面でそれが分かるシステムになっている。変化したストーリーの該当の章の部分が黄色になる。

× △ボタンで既読スキップだけど、一画面分の文章を表示してストップになる。ページ送りはボタンを押さないとダメ。このゲームはシステム上、繰り返しプレイが前提になるので、快適に遊ぶなら連射機能付きコントローラーが必須。
× まだ最終章まで読んでいないストーリーがある場合、各主人公の行動によって他の主人公のストーリーが変わった場合、それらを読まないと、他のストーリーは選択不可。ストーリー展開に矛盾が出ないための措置と言えるけど、展開が変化したストーリーが既に読んだことのある場合でも、いちいち再読しないといけないので面倒。読んだことのある展開の場合、章自体をスキップできれば良かった。
× ストーリーが変化した場合、ヒストリカル・ファクトの文章も変化する場合があるけど、しかし変わった場合に色が付いたりしないので分かり難い。ヒストリカル・ファクトについても文章が変わった場合、既読になった場合に色が変化すると良かった。

 


管理者:中霧里五
連絡はこちらにお願いします。
リンク切れ、誤字、脱字など至らない点がありましたら、お知らせいただけると助かります。
このサイトはリンクフリーです。 http://gamehyoron.com/