選択肢によって展開が変わっていくアドベンチャー。一週間の期間のストーリー、ループになっているストーリーを何回か繰り返し、最終的にエピローグに辿り着く。「歌月十夜」「「あの、素晴らしい をもう一度
」と似たようなシステム。
一見ほのぼのギャグチックな学園恋愛ものに見えるけど、実は学園ものでは全然なく、（ギャグもあるけど）内容はかなりハード。
ココで「月姫」「Fate」の奈須きのこ氏が「絶対に超えられない壁として君臨する作品」とまで絶賛していたのを見たのがきっかけ。その後、ネットで調べてみて評判も高かったのでプレイ。
フライングシャインのHPにある「CROSS†CHANNEL」の紹介では「学園青春ＡＤＶ」となっており、ストーリー紹介を見ても「ぽつぽつと姿を見せる仲間たちと、主人公は触れあっていく。」「バラバラだった部員たちの心は、少しずつ寄り添っていく。」とか学園ものっぽい紹介のされ方だった。しかしこれは大嘘。僕がパソゲーで好んで遊ぶものの多くは、内容がサスペンスとか伝奇でちょっとデンジャーなもの（「月姫」「Fate」「ファントム
オブ インフェルノ」「痕」「Esの方程式」など）で、ほのぼのした恋愛ものはおそらくそれほど好みではない。しかし「CROSS†CHANNEL」は面白かった。それは「恋愛ものでもレベルが高かったから面白い」のではない。
「CROSS†CHANNEL」はむしろ「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」とベクトルが同じであり、「ほのぼのした恋愛もの」では全然ない。間違いなく。登場人物のエゴやトラウマが目立つ展開で、むしろ僕の好みにマッチするゲームだった。
「CROSS†CHANNEL」は中盤、後半の盛り上がりに比べると、序盤は少し退屈。しかしその序盤で何気なく過ぎていく中でも「あれ？、今のって何？」「どうしてこういうセリフなの？」と感じるのが多い。それらの伏線が指すものは中盤、後半で明らかになるのだけど、伏線から展開が予想できる分かりやすいものではなく、その時になってようやっと「こういうことだったのか」と興奮できる展開だった。
キャラクター紹介を見る限り、みんな一見普通そうだけど、しかし実は危ない人ばっか。僕好み。サイコチックにキレて叫ぶキャラというのはいないけど、しかし一部分が徹底的に欠けている、歪んでいる、そういうのが多かった。その欠け具合、歪みようが明らかになる展開が非常に素晴らしかった。そして欠けてるけど、歪んでるけど、それを嫌悪してしまうような後味の悪いものでもなかったと思う。
「CROSS†CHANNEL」には5人のヒロイン（支倉曜子、宮澄美里、佐倉霧、桐原冬子、山辺美希）がいる。普通なら、このヒロインのシナリオは最高だったけど、このヒロインのシナリオはそれほど好きではない、あまり印象に残らなかった、ということもあるけど、しかし「CROSS†CHANNEL」のヒロインは全員強烈だった（全員魅力的とは書かない）。主人公に対して強烈な思いを抱いていたり、主人公の過去に大きく関わっていたり、主人公の今後の指針を決定づける重要な行動をしたり、ストーリー展開上で重要な役回りを演じたり。
個性的なヒロイン達に比べれば劣るけど、男性キャラの桜庭浩、島友貴も味のあるキャラだった。声優さんの話で、桜庭浩役の「十文字隼人」氏が子安武人氏、島友貴役の「牛久京也」氏が山口勝平氏、新川豊役の「間寺司」氏が堀川りょう氏と同一人物という噂を聞いたけど、それが本当なら男性キャラにこれ以上ないくらいの豪華キャストを当てたことになる。まぁ噂がデマだとしても、「CROSS†CHANNEL」での声優さんの演技は自然だったと思いますけどね。女性キャラの方も含めてね。
「CROSS†CHANNEL」の主人公・黒須太一は説明書には「人並みにエロ大王でセクハラ大王」と書かれていますが、これも大嘘。「パンツ売ってくださーい！！」「ぜひ子孫繁栄のお手伝いも小生めに一任してはいただけまいか」「スク水からアンスコまで、黒須太一はあなたの部活ライフをいやらしくサポートします！」「女の子を脱がせる技術に、怠りない」などのセリフを喋り、行動面でも積極的なヤツで、「人並み」では断じてない。主人公のせいで「CROSS†CHANNEL」は下ネタも多い（僕は下ネタ大好きだからいいけど）。
黒須太一は僕が嫌いなヘタレ主人公ではない。しかしヒーローというわけではない。むしろシナリオ上、感情移入できない主人公であり、物語も主人公・黒須太一から見た物語、というより、第三者的視点から黒須太一がさまざまな展開を経て成長していくのを見る、という形式だった。「CROSS†CHANNEL」は主人公以外フルボイスだけど、主人公にボイスがあったとしても不自然では無かったと思う。